「最悪に近い」　寒冷地手当めぐる日本郵便待遇格差訴訟で、原告敗訴

日本郵便で働く無期の契約社員と退職者の男女6人が正社員と待遇に格差があるとして、同社に寒冷地手当の差額分の支払いを求めた訴訟の判決が22日、札幌地裁であった。右田晃一裁判長は「寒冷地手当の支給について相違があることが、不合理とまでは言えない」として原告の請求を棄却した。原告は控訴する方向で検討している。

　原告側は、「寒冷地域に居住し、働いているために暖房費などの負担が増える。その事情は、正社員であっても契約社員であっても変わらない」などと主張。雇用形態が異なることを理由に、契約社員に寒冷地手当を支給しないのは不合理だと訴えていた。

　判決では、日本郵便が契約社員の時給をどう決めているかについて言及。同社が、各地域の最低賃金に20円を加算した額を時給の下限にしていると認定した。

　そのうえで、各地域の最低賃金は、労働者の灯油などへの出費も加味されたうえで定められていると指摘。同社の時給が「寒冷地で勤務することによって増える生活費が全く考慮されていないものではない」と結論づけた。

　一方、継続的な勤務が見込まれる契約社員に寒冷地手当を支給することには、「合理的な理由がある」とも示した。

　この訴訟をめぐっては、2020年2月、全国の日本郵便で働く契約社員と退職者約150人が、待遇の格差は不合理な労働条件を禁じる労働契約法20条（現・パートタイム有期雇用労働法8条）に反するとして、札幌地裁を含む7地裁で一斉提訴。同年10月、日本郵便の待遇格差をめぐる別の訴訟で、最高裁が判決で格差を「不合理」と判断した。

　それをうけ札幌地裁でも、昨年11月に寒冷地手当を除く6項目について和解が成立。同社から6人に対して約120万円の和解金が支払われていた。

　原告側弁護団の中島光孝弁護士は判決について、「最悪に近い結論」と批判した。有期雇用から無期に転換し、今も同社で働く原告の40代男性は「雇用形態に関係なく、寒い北海道で暮らす人々は暖房を使うのだから、少しでも寒冷地手当を出してほしかった。最低賃金程度の時給では足りない」と話した。（石垣明真）

朝日新聞　2023/11/22 20:30
https://www.asahi.com/sp/articles/ASRCQ5HL9RCQIIPE007.html?iref=sp_life_top__n