【沖縄タイムス/社説】［［2021衆院選］外交・安全保障］沖縄の負担軽減論じよ

　大国化する中国や、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の存在など、日本周辺の安全保障環境は激変している。これにどう対応するかも衆院選の重要なテーマだ。

　多くの党が日米同盟の強化をうたうが、「力」の重視が際立つのが自民党だ。政権公約で「国防力の強化」を打ち出し、敵基地攻撃能力の保有に言及する。これまで対国内総生産（ＧＤＰ）比でおおむね１％以内だった防衛費を「２％以上も念頭に増額を目指す」とした。

　ただ、この２％という水準は、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）諸国すらいまだ多くが達成できていない。防衛費の倍増は、周辺諸国との間に不必要な緊張を生むことにつながりかねない。

　自民党と連立を組む公明党はこれら政策に言及していない。安全保障政策に関し、与党内の方向性が一致していないように見え、両党は違いを説明する必要がある。

　日本は、戦後一貫して相手から攻撃を受けた場合に初めて防衛力を行使する「専守防衛」を堅持し、敵基地攻撃能力などの過剰な軍事力をあえて保持してこなかった。

　野党も、立憲民主党が健全な日米同盟を外交・安保政策の「基軸」とする一方で同党と選挙で共闘態勢を取る共産党が日米安保条約の廃棄を主張する分かりにくさが残る。両党は、政権交代が実現した場合でも共産は閣外協力にとどまるとしているが、根本政策での違いは大きい。より丁寧な説明が必要だ。

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　米軍普天間飛行場を巡っては、自民が名護市辺野古への移設による返還を主張するのに対し、立民、共産、社民、れいわ新選組の野党４党は、工事中止を共通政策として掲げる。国民民主もいったん停止後米側と対応を話し合うとしている。新基地建設を巡る与野党の違いは明確だ。

　衆院選が政権を選択する選挙である以上、こうした違いも避けて通れない争点だ。

　同時に、沖縄の基地負担軽減や日米地位協定の改善の必要性について、主要政党は何らかの形で言及している。

　米兵や米軍機による事件事故、騒音といった問題以外にも、最近では、基地内で使用されていた泡消火剤に含まれる有機フッ素化合物ＰＦＯＳ（ピーホス）やＰＦＯＡ（ピーホア）の漏出による健康への懸念なども問題視されてきた。これらにどう対処するのか、各党は具体的に論じるべきだろう。

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　来年３月には、核兵器禁止条約の第１回締約国会議が予定されている。核兵器の開発や保有、使用を全面的に違法とした初の国際条約であり、被爆者は切実な思いで日本政府の署名を求めている。

　この締約国会議には、野党や公明がオブザーバーとしての参加を主張している。だが、広島出身で「核軍縮はライフワーク」とする岸田文雄総裁（首相）が率いる自民は「核兵器国の協力が不可欠」との立場だ。唯一、核兵器の行使による悲惨さを体験した国として、会議にどう対応するかも各党に問われている。

沖縄タイムス 2021年10月28日 07:00
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/853937