欧州で高まる防衛強化論、GDP比2%増ドイツが決断　ショルツ首相「自由と民主主義を守るには相応の投資をしなければならない」

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【パリ＝谷悠己、ロンドン＝加藤美喜】ロシアのウクライナ侵攻で域内に戦場を抱えることになった欧州で、防衛力強化の動きが加速している。軍縮を進めてきたドイツは、毎年の防衛予算を北大西洋条約機構（NATO）が求める「国内総生産（GDP）比2％」と大幅に増やす政策に転換。欧州連合（EU）も加盟国が組織的に防衛費を増強する方針を打ち出した。日本を含め東アジア地域での議論にも影響しそうだ。
　「防衛分野で歴史的な決断を下す国が増えている。欧州全体でも組織的に防衛力を構築する必要がある」。フランスのマクロン大統領は11日、パリ近郊ベルサイユでのEU首脳会議後の記者会見で強調した。欧州委員会は5月までに防衛投資計画を策定する。
　「歴史的決断」の代表例がドイツだ。ショルツ首相はロシア軍の侵攻4日目の先月27日、GDP比1・5％程度だった防衛費を2％に引き上げ、老朽化が指摘される軍備増強のため1000億?（約13兆円）の基金を創設する方針を発表。「自由と民主主義を守るには相応の投資をしなければならない」と連邦議会で演説し、喝采を浴びた。

　GDP比2％の防衛費は中ロなど専制主義勢力が台頭したことを背景に、NATOが2024年までの達成を加盟各国に求めていた。しかし、20年の年次報告段階で達成したのは加盟30カ国のうち11カ国のみ。米国の3.73％を筆頭にギリシャ（2.68％）、エストニア（2.33％）、英国（2.32％）と続くがドイツは18番目の1.56％で、トランプ前米大統領から「低い比率」を名指しで批判されたこともある。
　第2次大戦への反省と冷戦後の国際情勢の変化からドイツは1990年の東西統一時に50万人いた連邦軍兵士を20万人未満に削減していた。

　「武力増強は良い結果をもたらさない。また過去に戻る気がして心配だ」。ベルリン市民のルドビックさん（70）のように疑問視する声がある一方、独テレビRTLなどによる世論調査では、78％がショルツ氏の新方針を支持している。
　ドイツの決断に呼応するように、ポーランドはGDP比2％超の防衛費を3％まで引き上げる計画を発表。スウェーデンやデンマークも2％を目指す方針を表明した。NATOのストルテンベルグ事務総長はロシアが他国への軍事圧力を強める事態を「ニューノーマル（新常態）」と呼んで対応を訴えており、今後も追随する国が増えそうだ。