中国株、政府の買い入れ指示で「反発」も長期低迷は確実視…習近平、IT企業の「締め付け」で大誤算

中国政府の「PKO」が発動

　2月19日、旧正月“春節”の連休は終わり、中国の株式市場は再開した。

　その当日、上海総合指数は上昇した。株価の支えになったのは、中国政府の“PKO=プライス・キーピング・オペレーション”と呼ばれる政府の株価維持策だ。

　政府の強力な呼びかけで売り圧力が抑えられ、とりあえず株価は反発した。一部先端銘柄の成長性を評価するアナリストもいたようだ。

　ただ、中国株について弱気な投資家は多い。

　不動産バブル崩壊によって、投資を増やして経済成長率を押し上げるという経済運営(成長モデル)は限界を迎えている。

　足許、不動産デベロッパーや、地方政府傘下の融資平台の不良債権急増など不安材料は目白押しだ。

　若年層を中心に雇用環境は悪化し、デフレスパイラルへの突入も懸念される。

中国株買いを指示する政府
　当面、中国の景気が本格的な回復は考えにくい。株価も不安定な展開が続くとみられる。

　今のところ、中国政府は不動産バブル崩壊の処理を本格化し、新しい経済成長のモデルを構築することは難しいだろう。

　それよりも、金融緩和などで経営体力を失った企業の延命を重視している。“ゾンビ企業”の整理が本格化しないと、成長期待の高い分野への資金再配分は停滞する。

　中国株式市場の本格反転にはまだまだ時間がかかりそうだ。

　2020年8月に不動産バブルが崩壊して以降、中国政府は政府系ファンドなどに中国株を買うよう指示を強めている。

　今年1月、資金流出を食い止めるため日本株ETF(上場投信)の売買制限を実施し、空売り制限措置も強化した。

　政府の力で、株式市場の価格決定メカニズムを押さえ込もうとしているものの、その中・長期的な効果には疑問符が付く。

(略)

　依然として、中国株に悲観的な投資家は多い。最大の要因は、これまでの中国経済の成長モデルに限界が来ていることだ。

　リーマンショック後、地方政府はデベロッパーに土地の利用権を売却し政策経費を調達した。それによって、不動産建設やインフラ投資を増やした。

　人為的に成長率をかさ上げする、中国版の経済メカニズムが構築された。経済が好調なため、一般市民の党への支持も増えた。

　しかし、その成長のメカニズムは永久には続かない。不動産バブル崩壊でメカニズムは逆回転し始めた。

　足許、不動産、地方政府、シャドーバンク、地方銀行など多くの分野で不良債権問題は深刻だ。政府のIT企業の締め付けなどで、若年層の雇用喪失も鮮明化した。

バブル崩壊を見ているよう

　デフレ経済も深刻化した。2023年、景気低迷懸念、政策の不透明感などから海外企業の直接投資は30年ぶりの低水準に沈んだ。

　住宅在庫の解消には少なくとも10年が必要との見方や、不動産市況のさらなる悪化懸念も増えた。

　ここへきて、中国政府は金融緩和策を強化し、銀行に不動産向けの融資を増やすよう指示を強めた。金利負担を軽減してゾンビ企業の延命を図っているようだ。

　それは問題の先送りにしかならない。債務問題が深刻な不動産企業への公的資金注入や不良債権処理が遅れると、デフレ圧力の高まりなど経済環境の悪化は鮮明化する。

　それは、わが国のバブル崩壊時の教訓でもある。中国は、PKOなどわが国がとったのと同政策は進めようとしているように見える。

　本来であれば、IT先端分野で企業の成長を支援し雇用機会を増やすなど、新しい成長モデルの確立に向けた改革が必要なのだが、今のところ、そうした動きは目立っていない。

　それでは景気低迷の懸念は高まるばかりだ。中国全体で、株価の低迷は長期化するだろう。

真壁 昭夫（多摩大学特別招聘教授）
https://news.yahoo.co.jp/articles/a4393fb9a7f29a72566f62eab7b0b5c6aa4236f3?page=1